キョーコちゃん視点のお話でした。……シリアス?
もっと甘い話が書けそうなお題ですが、私の中ではこれが二人の『温もり』かな、と。
敢えて文中では『彼』の名前を出していませんが、もうおわかりですよね?(笑)
温もり ――仄かに鼻腔をくすぐるコロンの香り。 ――優しく私を包み込む貴方の腕。 そのどちらも、私をまどろみから解放してくれない。もう起きなくてはいけないのに。 貴方の温もりは心地好すぎて、ずっとこうしていたい気持ちにさせる。 母は、私に何一つ温もりを与えてくれなかった。 どんなに求めても、私のことを愛してはくれなかった。 どんなに頑張っても、私のことを褒めてはくれなかった。 何をしても、私のことを認めてはくれなかった。 通常、子供が母親に与えられるはずの愛情も、言葉も、何一つ記憶にない。 あるのは――ただ私を置いていくあの人の後姿だけ。私の声を拒絶するあの人の背中だけ。 だから……母の温もりを、私は知らない。 唯一心に温もりを与えてくれていた幼馴染も、私を突き放した。 他の誰でもない、自分を選んでくれたのだと思っていた。 何も与えられずとも、愛情だけは与えられていると信じていた。 ただ傍にいられるだけで、幸せだと感じていた。 けれどそのどれもが偽りだった。 私を選んでくれたわけじゃない。愛情など無かった。ただお金がかからない家政婦が欲しかっただけ。 あの頃感じていた幸せも――そう信じていたかっただけ。 本当はたくさん我慢していた。 彼に嫌われたくなかったから。心にある温もりを手放したくなかったから。 でも……今はもうその温もりも無い。 けれど今――私には求めて已まなかった温もりがある。 誰よりも大好きな貴方から与えられる、心と身体の温もり。 神様。 もし本当にいるというのなら、どうかこの温もりだけは奪わないでください。 母の愛情も、幼馴染の優しさも、この温もりと引き換えならば惜しくはありません。 だからどうか―― 「…………ん…」 ああ…もうすぐ貴方が目覚めるのね。なら、今度こそ本当に起きなくては。 この腕の温もりがなくなってしまうのは少し寂しいけれど、心の温もりはなくならないから。 少しくらいは我慢できる。 さあ、今日も一日頑張りましょう? 貴方のために美味しい朝ごはんを作るわね。 そのためにも――この温もりとは、ひと時の間お別れ。
キョーコちゃん視点のお話でした。……シリアス?
もっと甘い話が書けそうなお題ですが、私の中ではこれが二人の『温もり』かな、と。 敢えて文中では『彼』の名前を出していませんが、もうおわかりですよね?(笑) |