仁も義もない彼らのバトル





「……だから、いい加減諦めたらどうだい?」
「それはこちらのセリフです。大人気ないですよ?」
「別に構わないね、キョーコと甘〜い休日を過ごすためなら」
「取らぬ狸の皮算用、って言葉を辞書でご確認ください」

ここはLME事務所にある、関係者のみが入れるラウンジの一つ。そこで一触即発の空気を醸し出して向かい合う、LMEが誇る看板俳優達がいた。
敢えて言う必要もないが、敦賀蓮と琴南奏江である。その傍らには、オロオロしているキョーコと社がいる。


険悪な空気の原因は、今度の休日であった。
偶然重なった三人のオフ。こんなことは、お互いのマネージャー達が画策しない限りそうそう起こるものではない。しかし、今回は本当の偶然である。
だが、問題なのは休日そのものではない。その休日を、どちらがキョーコと共に過ごすかで争いとなったのだ。

今時こんな子供染みたケンカ、10代の少年少女でもしない。

「敦賀さん、一緒に暮らしているんですよ?休日くらいキョーコを貸してくれてもいいんじゃありません?いい大人なんですから
何の冗談かな?オフを一緒に過ごしている回数は、琴南さんの方が多いだろう?俺だって一日中キョーコと過ごしたいんだよ。社さんをあげるからキョーコは諦めてくれないかな?
「こら待てっ!!俺はモノかっ!?」
それはありがたく受け取りますけど「奏江さん……(涙)」それとこれとは別です」
「偶の休日くらい、社さんと過ごせばいいじゃないか」
「その日、倖一さんは夕方まで用事が入ってます。夕方からは言われなくても倖一さんと過ごしますから、それまではキョーコを譲ってください」
「欲張りだな、君は。」(にっこりv)
「腹黒よりマシです。」(微笑み返しv)

腹黒vs辛口の応酬に、もはや言葉を挟めない当人(キョーコと社)達。

「ど、どうしよう……モー子さんを取ると後で蓮のお仕置きと言う名の鬼畜行動が怖いし……でも、蓮を取ったらモー子さんに冷たくされそう……
うわっ、選択の幅せまっ!?
「……なあ、二人とも。このままだとキョーコちゃんが俺の常備薬を飲まなきゃならなくなるまで平行線を辿りそうだし、何か勝負して決めたら?」

キョーコが哀れに思ったのか、勝負を提案する社。
だが、そのセリフを聞いたキョーコが、感謝の念を抱くより先に社の日常を哀れに思ったことは言うまでもない。

そんな二人の様子にたとえ気付いていてもスルーしつつ会話を続ける蓮と奏江。

「……確かにこのまま言い争いを続けても仕方ないわね」
「俺もそのことには同意しよう。
――で?何で勝負する?」
「そうね……ここは公平に、キョーコと倖一さんに決めてもらいましょう」
「「ええっ!?」」
「了解。どうせだから3つくらい決めてもらおうか?先に二勝した方が勝ちってことで」
「いいですよ?」
「「こっちの意思は!?」」
「「あるとでも?」」
「「…………スグニデモ決メサセテイタダキマス。」」


こうして、大物俳優二人による激しくもくだらない闘いの火蓋が切って落とされた……







<Battle-1:神経衰弱>

「……なんでコレ?」
「「平和的だから」」
「そりゃそうでしょうけど……」

種目内容にしばし唖然とする蓮と奏江だが、任せると言った以上仕方ない。
お互い不敵に微笑み合う。

「では、いきますよ?」
「いつでもどうぞ?」




勝負は互角であった。
一瞬で台本を暗記できるほどの抜群の記憶力を持つ奏江。一度引かれたカードは全て一発だ。
それに対抗するのは、異様なまでに的中率の高いカンを持つ蓮。未だ引かれていないカードでも、何故かペアを引き当てている。

彼らは本当に人間か?

その様子を見ていたキョーコと社は、涙を流さずにはいられなかったと言う……




そしてその結果は――

「私の勝ち、ですね?」(にやり)
「……仕方ないね。一組差でも負けは負けだ」







<Battle-2:演技?対決>

「これはまた……」
「……随分と限定してきたわね」

次の種目は演技?対決。行う当人達の本職であるからして妥当といえば妥当なのだが。

「ただ演技するだけだと勝敗が決まるかどうかわからないから、純粋な演技勝負じゃないけどね」
「どういうこと?」
「ちょうど今、蓮と奏江さんは教師役で共演してるだろう?それぞれの担当教科の知識を試し合ってくれ」
「…………つまり?」
「蓮が英語教師だからモー子さんに英文を出して」
「奏江さんは国語教師だから慣用句ね」

……もはや演技ではない。

「俺はいいよ?」
「私も構いません」
「じゃ、始めようか」




「“When in Rome, do as the Romans do”」
「“郷に入っては郷に従え”。『縁は異なもの味なもの』」
「『男女の縁は不思議なものである』。“our insistence are mutually”」
「“私達の意見は相容れない”。『君子は器ならず』」
「『器物はそれぞれ一つの用に適するだけだが、君子はどんな用にも融通が利く』。“do more harm than good”」
「“毒にこそなれ薬にはならない”。『男女は七歳にして席を同じくせず』」

……………………

「『世間知らず』っ!“fall in love with each other”!なかなかやるねっ」(ぱこーんっ)
「“恋仲になる”!『名有りて実なし』っ!あなたこそっ!」(ぱちこーんっ)
「『虚名ばかりで実質が伴わない』!失礼な!“marry for love”っ!」(パキッぽこーん)
「“恋愛結婚をする”っていつの話になるんでしょうねっ!?『鬼の居ぬ間に洗濯』!」(ぴしっバコッ)




「…………漫才師もビックリな早口言葉ですね」
「…………俺はむしろどこからチョークと通信簿が出てきたのかが気になるんだけど」

知識合戦でも勝負が決まらないことに業を煮やした二人はどこからともなくチョークと通信簿を取り出し、羽子突き宜しく打ち始めたのだった。
チョークが飛んでくる間に相手の質問に答え、打ち返す間に質問をする……まさに神業。

「もうどうでもよくなってきたんですけど。――あ、紅茶もう一杯どうですか?」
「俺も。――ありがとう。ああ…美味しいなぁ」

現実逃避に走る二人。
頑張れ。としか言えない。




「――ふぅ。今度は俺の勝ちだね」(キュララン)
「……くっ、体力の差で負けるなんてっ」







<Battle-3:???>

「それで、次は?」
「……まだやるの?」
「当然でしょ!」
「って言ってもなぁ……」

すでに疲れ切っている二人と逆に、闘気を漲らせる二人。
困った表情で向き合い、どうしたものかと考えあぐねていると――

「お姉様ぁぁぁっvvv 蓮様ぁぁぁっvv」
「「「「マリアちゃん!?」」」」

入り口の方から嬉しそうに笑いながら駆け寄って来るマリア。予期せぬ人物の登場に、四人とも驚きの声を上げた。


「ど、どうしたの?」
「何かね、社員達が『××から異様な空気が溢れてくる』ってウワサしてたの。だから、ここに四人のうちの誰かが居ると思って来てみたんだけど……全員揃ってたのねv

凄まじく道理に適っているためか、誰もツッこまない。疲れ気味であった二人はともかく、蓮と奏江でさえ冷や汗が。

「それで、皆さんで何をしてらしたの?」
「あ〜……今度のオフが重なったから、どうしようかってことになっ」
「あら?それってもしかしておじい様が開くイベントの日のことかしら?」
「「「「……イベント?」」」」
「ええ。『うちの看板俳優達が珍しく揃うんだ。どうせだからパァーーーーっと派手なことしようや♪よしっ、これはもう決定事項だ!!』っておっしゃってたけど?昨日。


この言葉にキョーコは心から感謝し社は胸を撫で下ろし、蓮と奏江は――

「どうやら……」
「今後真っ先に排除するべきは……」
「「社長ってことか」」









(終わってください。)

秋崋様の6000hitリク、「ギャグ・キョーコをめぐって蓮様と奏江の戦い」でしたv

一言で言うと「やりすぎ」(笑)
蓮様もモー子さんも人智を超えちゃってます。ツッコミ所満載ですよ♪┐(´ー`)┌
どちらを勝たせてもキョーコちゃんが哀れなので、被害は社長にお譲りしました。 ←酷っ


秋崋様。こんな感じで宜しかったでしょうか?煮るなり焼くなりお好きにドウゾ!