嫉妬せよ





地方ロケに出向いた蓮とキョーコ。
久しぶりの共演ということで、二人は嬉しさを隠し切れないでいる。

「こうやって共演するの、久しぶりねー」
「そうだね。地方ロケもあるから、離れずにすんで良かったよ」
「うんv 移動もご飯も、一緒にしていい?」
「当然vv」

――訂正。隠すつもりなど更々ないようだ。


二人の様子を見ていた社は、「俺も奏江さんと離れたくなかったのに……」と嘆いていたとか……







順調に撮影も進み、お昼休憩に入る。
蓮とキョーコは、ロケ弁を手に少し離れたところで腰を下ろした。

「ここのお弁当、結構美味しいのよね♪」
「そう?俺はキョーコの作ってくれたお弁当以外、全部同じに思えるけど」
「ふふっ、ありがとうv さすがにロケ地でお弁当は作れないから、我慢してね?」
「……わかってるよ」

イチャつくなら他でやれ。
その場に居た全員が思ったが、馬に蹴られたくないので黙殺。





にゃー・・

「ん?」
「わぁ……カワイ〜vv」

食事を始めて数分後。
談笑していた二人――というか蓮の足下に、数匹の子猫が集まっていた。ゴロゴロと咽を鳴らして頭を擦りつける様は、キョーコでなくても可愛いと思うことだろう。

「どこから集まってきたんだ?」
「蓮ったら、猫ちゃんをも惹きつけるのね……(天然フェロモン男…)」
「何か思ったかい?」
「イエ。全然。」
「……まあ、今は敢えて追求しないでおくよ…(後でたっぷり身体に訊くからね)


蓮は弁当の中から魚のフライを箸で摘み、衣の部分を取り除いて子猫に与えた。子猫達は嬉しそうな声を上げてそれに群がる。
その様子を見て、蓮は優しく微笑んだ。

――しかし、忘れてはいけない。蓮が何の躊躇もなく弁当を分け与えたのは、これがキョーコの手料理ではなかったからだということを。
もしこれが彼女の手料理だったなら、浮かべたのは微笑みではなく苦笑だったことだろう……


魚を食べ終えた子猫達は、ますます蓮に懐いて離れようとしない。
それを見ていたキョーコは羨ましそうな視線を蓮に送った。

「いいなぁ……私も子猫に群がって欲しい……」
「キョーコも魚をあげてみたら?」
「あ、そうかっ!」

名案とばかりに手を打つキョーコ。
即座にフライを摘み、衣を除けてから足下に置いてみる。すると、子猫達は蓮から離れてキョーコに群がった。

「きゃーーーーっv」

満面の笑みで子猫に触れる彼女を見て、蓮は微笑ましく思っていた。そう……このときまでは本当に微笑ましく思っていたのだ。

「このコ、真っ白ね〜vv …………えいっv」(ちゅっ)


ピシ。


……その瞬間、確かに空気の固まる音が聞こえた。
足下の子猫達の中に居た白猫。その子猫を気に入ったキョーコは抱き上げ、その鼻先にキスをおとしたのだ。蓮の目の前で。


たかが子猫相手というなかれ。彼の独占欲はエベレストよりも高く、マリアナ海溝より深い。たとえ相手が子猫だろうと十分に嫉妬の対象だ。

(――その愛らしさを武器に、キョーコの唇をいとも簡単に奪ってくれるとはね……この俺でさえ、キョーコからしてもらえることは数えるほどしかないのに)

そんな蓮の胸中は露ほども知らず、キョーコは無邪気に笑っている。

「ねぇ蓮?蓮はどのコが一番カワイイと思う?」
「……………………俺も、一番可愛いと思う子にキスしていい?」
「??別にいいわよ?(子猫だし)」

蓮の申し出に「何でそんなこと訊くんだろ?」と思いながらも了承し、彼が子猫にキスをしている姿を思い浮かべて、その微笑ましさにニコニコと笑顔を浮かべた。


――もしこのとき、彼女が蓮の表情を見ていたなら迷わず断ったはず。
何故なら、彼の顔には極上の似非紳士スマイルが浮かんでいたのだから……


「じゃあ、遠慮なくv」
「どうぞ〜♪この白いコ?それともこっちの黒いコ?あ、それとンンッ!?」




〜しばらくお待ちください〜




「………………蓮っ!いきなり何するのよっ////」
「ん?キスしていいって言ったじゃないか」(キュラリ)
「それは子猫の話でしょっ///」

顔を真っ赤にしてそう抗議すると、蓮はしれっと答えたのだった。





「間違ってはいないよ?俺の一番可愛い子はキョーコだからねv」









(終わってください。)

ザーーーーーーーッ(*´д`*)
ひ、久しぶりに砂を吐きました……っ!何なんですか、このゲロ甘トークはっ!?

お題ですが、普通に人間相手に嫉妬するのは面白くないので子猫にしてみました。蓮様、心が激しく狭いです(笑)

【甘々】路線でいくと言ってもこの程度ですが、お付き合いくださってありがとうございました!