観察せよ






――ふと目覚めたとき、目に飛び込んでくる誰よりも愛しい女性の寝顔がこんなにも幸せなものだとは思わなかった。









いつもくるくると変わる表情は、眠っていてもしっかりと表れるんだな。
ほら、今もまた随分と楽しそう。

「…………ん……モ…子さ………」

やれやれ。琴南さんの夢を見てるのか。ほんと、仲がいいな。
お互いに初めての親友だって言ってたからそれも仕方ないんだろうけど……正直、妬けるなぁ。起きている間も二言目には「モー子さんがね」「モー子さんとね」って言われる身としては、大人気ないと思ってはいても彼女に嫉妬してしまう。


……キョーコの口から彼女の話題が出ないと、それはそれで「何かあったのかな?」って心配になっちゃうけど。








「…………こ…ンの……バカ……」

ん?今度はご機嫌ななめだな……さっきまではにこにこして――

「ショー……(怒)」


…………………………へぇ?アイツの夢なんか見てるんだ?

なかなかいい度胸だね?どう考えてもいい夢ではないみたいだけど、だからと言って赦せるものじゃないよ?
あれだな。これはもう、お仕置き決定だね。目覚めたときは覚悟しておけよ?拒否権を与えるつもりなんてサラサラないから。


不破に向ける感情――それが「恋慕」ではないということはわかっている。それでも、君の中にアイツの存在があるというだけで俺の感情は波立つんだ。

「今の君」を作ったのは、俺を含めたたくさんの人。だけど「16歳までの君」を作ったのは、間違いなくあの男だからね。

あの石――コーンが君の心を支えていたって事は聞いて知ってる。俺との思い出も、ほんの少しは「キョーコ」を作る要素になってたとは思う。
けれど、やっぱり不破の影響が一番大きい。それが、どうしても気に入らない。


……俺も随分と変わったな。自分がこんなにも嫉妬深い男になるなんて思いもしなかったよ。社さん曰く、元々嫉妬深かったらしいけどね。








……あれ?……泣いて…る……?
さっきまで怒っていたはずだよな?

「…………っ……かないで……」

「行かないで」?ということは、誰かに(ここでまたアイツの名前を出したら即刻お仕置きだけどね)置いていかれる夢か。

「……おか…あ………っ」
「っ!!」

母親の夢――を、見てるんだな……過去は、未だに君を悪夢に引きずり込むのか……

「……ここにいるよ。俺は、ここにいるから。ずっと君の傍にいる。だから――」


――だから、泣かなくていいんだよ。







夢の中で俺の声が聞こえたのかな?さっきまでの悲痛に満ちた表情は消え、今は腕の中でとても安らかな表情になってる。
どんな夢を見てるのかわからないけど、きっといい夢に違いな――

「…………れ…ん……」
「………………え?」
「……大…好き………ずっと…ばに……」


…………驚いた。まさか、俺の夢を見ているなんて……あんなに幸せそうに。しかも普段は照れてあまり言ってくれない言葉まで……

――はぁ…俺、今すごく締まりのない表情してるんだろうな……嬉しすぎて顔の筋肉が上手く調節できない。……その必要も無いけど。








まったく……観察のしがいがありすぎるね、君は。起きているときも寝ているときも、俺の関心を惹きつけて已まないんだから。










<おまけ>

「……ぅん…………あ…おはよ〜、蓮」
「おはよう。よく眠れた?」
「ん〜・・なんか、色んな夢を見たわ」
「……だろうね。百面相しながら寝言言ってたし」
「うそっ!?……うわぁ、恥ずかしいぃ///」
「別に恥ずかしがることはないけど……覚悟はいいよね?」(にっこりv)
「(な、なんで朝から似非紳士スマイルなの?)……か、かくご、デスカ?」
「見ただろ?『アイツ』の夢」
「…………あ゛。」
「運のいいことに今日はオフだし……二度と同じ夢を見れないように調教だなvv









(終われ)

「キョーコちゃんの寝顔(喜怒哀楽)を観察する蓮様」でいってみましたv
が、滅茶苦茶ですね……まとまりが全く無い。しかも甘いのかどうか微妙ですし。

キョーコちゃんの見せる表情と表情の間はある程度経過しているとお考え下さいm(_ _)m ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!