二人の人魚姫 後編





「なんだ、生きてたのか」
「悪運のつえー奴らだな」
「「開口一番がそれですか。」」

新開王城へたどり着き、謁見の間で王子達が遭難したとは思えないくらいくつろいでいた新開王と黒崎王が、二人を認めたと同時に出た言葉がアレです。
こんな王が治める王国、よく崩壊しませんね。

王子達のツッコミは見事にスルーして、王達は二人が連れてきた女性達に目を向けます。

「ん?こりゃまた、随分と綺麗なお嬢さん達を連れて帰ってきたなぁ」
「彼女ら、お見合いリストにはいなかったぞ?さては遭難したと見せかけてナンパでもしてたか?」
「失礼な。ナンパじゃなくてプロポーズです。」(にっこり)
「うん、確かに」(コクコク)
「「爽やかに言うなーーーーっ」」

王が王ならその王子も推して知るべし。どこまでも常識が通用しません。
二人の元・人魚達は「早まったかも」とちょっぴり後悔を始めました。

そんな彼女達を放置したまま、二組の王と王子は話を続けます。

「ほぉ……?今まで浮いた話一つ無いと思ってたが、いたんだなぁ、恋人」
「いえ、今日初めて会いました」
「――ってことは何か?お前ら、会ったその日にプロポーズしたワケか?」
「そうですよ、叔父上」
「何か問題でも?」
「「別に?」」


((問題ないワケっ!?仮にも王子の結婚でしょ!?むしろ王子じゃなくても問題でしょーがっ!展開の早さは!!))


「なら何の障害もありませんね。早速結婚式を挙げましょうか」
「そうだねェ。面倒だし、合同結婚式でいいだろ?」
「俺は別に構いませんよ」
「あ、俺も」
「んじゃ、一週間後でいいな?」


((早っ!!っていうか、私達の意見は!?))


「はぁ!?何を言ってるんですか!そんなもたもたせず、今すぐ挙げればいいでしょうっ!?」
「いや蓮。叔父上の提案は十分に早いと思うぞ」
「そうそう。社君の言う通りだぞ〜。各方面に連絡しなきゃいけないんだからな」
「必要ありません」(即答)
「まー待てや。連絡は今後のためにも必要だぞ?国中に知らせておけば、彼女らがお前らのモンだって宣言できるワケだしな」


((私達、所有物扱い!?))


「そうすりゃ、彼女らが一人で城下に出掛けたとしても、お前らから奪おうなんて心臓に毛が生えたアホはいないし、安全だろーが」
「なるほど。それなら仕方ないです。一週間だけ待ちましょう」
「ほーい。決まり決まりっと」


((だから私達の意見はどうなるのよーーーっ!?))


――ちなみに、最後まで女性陣の意見が聞かれることはなく、男性陣の間で全てが決まったそうです。







奏江とキョーコが新開王城に招かれてから二日後。
二人は海岸沿いのテラスでお茶をしていました。

「……なんかもう、どうにでもなれって感じよね」
「ローリィ王も個性溢れる方だったけど……まさか地上に負けず劣らずの王が二人もいるとは思わなかったわ…」
「忘れてないとは思うけど――ていうか忘れられるはずないけど、その王達と張り合える王子が私達の結婚相手よ…?(しかも私の相手はモー子さんの相手より数倍上手…)」
「……ローリィ王じゃないけど、愛があるんだからいいんじゃない?」(遠い目)
「フフ…ソウネ……」

式の準備ということで、ウェディングドレスやら何やらと用意していたらあっという間に過ぎた二日で、彼女達は悟りを開いたようです。(開き直ったとも言いますね)

そのままティータイムを続けていると、不意に眼下の海から声が聞こえました。しかも、その声は彼女達にとってとても馴染みのある声です。

「この声……」
「マリアちゃんっ!?」


急いでテラスから顔を出すと、予想通り、マリアがブンブンと手を振りながら呼びかけていました。

「お姉様ーーっ!モー子さーーんっ!大変よーーーーーっ!!」
「どうしたのマリアちゃん!?あなた、まだ海上に出られないはずでしょ!?」
「ちゃんとおじい様の許可はもらってるわ!というより、おじい様からの伝言なの!!とにかく大変なんだからっ!!」
「もーーっ!落ち着きなさいよ、マリアちゃん!何がどう大変なのよ!?」

奏江の一喝で少し冷静さを取り戻したマリアは、大きく深呼吸をしてから説明を始めます。

「おじい様がお姉様達に渡したお薬あったでしょ?あれ、元々は飲んだら声が出なくなるっていう伝統的なお薬を、おじい様が改良して作った特製品らしいの」
「へぇ…ローリィ王って薬学に興味があったの?」
「いえ、そういうわけじゃないわ。単に『愛』の大好きなおじい様には、愛の語れなくなるようなお薬は存在自体が耐えられなかったそうよ」
「……そう」
「ってそれはどうでもいいのよ!おかげで声が出なくなる副作用はなくなったけど、代わりに違う副作用が発生したらしいの!」
「ちょっと何よそれ!?『副作用なんてない』って言ってたじゃないの!」
「あら?それは違うわ、モー子さん。おじい様は『声が出なくなるなんていう副作用はない』と仰ってたもの」

……確かに。ローリィが否定していたのは『副作用があるのか』というセリフではなく、『声が出なくなる』というセリフに対してです。
細かいツッコミですね、マリアちゃん。

「はいはいはい、わかったわよ!それで?どんな副作用があるわけ?」
「お二人が飲んだのは『make love』という名のお薬でね。その名の通り『愛』を意味するものでもあるけど、もう一つの意味の方に鍵があるのよ」
「『もう一つの意味』って……まさか!?
「そうっ、そのまさかなの!あれを飲んだ者は、その日から三日以内に愛する人と契りを交わさないと海の泡になってしまうという大変な副作
「「わーーーーーーっ!!」」

可憐な少女が嬉々として話す内容に、堪らず奏江とキョーコの二人は大声で制止をかけました。二人とも、顔が真っ赤です。

「マリアちゃん!!何てこと言い出すのっ///」
「でも、それを伝えに来」
「わかった!わかったからっ!帰ったらローリィ王に『何てえげつない薬を作るんですか!即刻廃品にしてくださいっ!!』って伝えておいて!!」
「わかったわ、お姉様v 私、お二人が消えてしまうなんて絶対にイヤよ?だから頑張ってねvv」
「「何をっ!?」」
「それじゃ、またねーーーーーっv」





可愛い妹分が置いていった、非常に有難くない問題に頭を抱える二人。
飲んでから三日以内ということは、今日までが期限ということです。知らないままだと明日には海の泡になっていたのですから、マリアには感謝しなければならないでしょう。
ですが、その副作用をなくすための手段が大問題です。

「……どうするのよ?」
「どうするって……う〜ん…………どうしよう?」
「このまま消えるのは論外だし……かと言って、今の話を二人に伝えるのは……///」
「恥ずかしいよね///」
「それなら問題ないよ?ちゃ〜んと話は聞いてたからねvv」
「「うわっ!?」」

気配も感じさせずに目の前に現れた蓮に、二人は大いに驚きました。しかも、その隣には社もいます。
蓮は見たこともないくらい神々しい笑みを浮かべ、社は茹で蛸のように真っ赤になっていました。

「れれれれれんっ!?今の、聞いてたのぉっ!?///」
「しっかりとv ――さて。愛しいキョーコの命のため、頑張ろうかvv」(キュラン)
「だから頑張るって何をっ!?」
「そりゃ色々とv」(ひょいとな♪)
「色々ってなにーーーーーっ(涙)」
「さ、行こうかvv」
「助けてモー子さ〜〜〜〜んっ」

奏江に助けを求めたキョーコですが、奏江もそれどころではありません。社と二人、顔を真っ赤に染め上げてお見合い状態なのですから。
よって、キョーコは心の底から嬉しそうな蓮に連れられ、彼の寝室へと運ばれてしまったのです。








結局、予定通りに結婚式を挙げた二組の男女。(それがどういうことなのかはあえて無視して下さいネ)
その式にて、やけに親しげなローリィと新開、そして黒崎の姿があったことで、また騒ぎがありましたが――それは別のお話です。


彼らは末永〜〜〜く幸せに暮らしましたとさ☆









(おしまい)

LOVEサイト『紫紺月夜』様の月葉様が1万hitを迎えられましたので、お祝いに押し付けた献上品です。
人魚姫…?ホントに?……原作曲げすぎだってば。┐(´ー`)┌
それに前中後編って……何やってるんでしょうか?

配役は、
・人魚姫→キョーコ、奏江
・王子→蓮、社
・海の王&魔法使い→ローリィ宝田
・人魚姫の姉→マリア
・王子の親→新開、黒崎
でお送りしましたv


月葉様。お祝いにもならない駄文ですが、どうぞお納めくださいませ!返品可です!!



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