ルージュの伝言





今日はクリスマス。恋人同士には欠かせないイベントの一つである。
それは、トップ芸能人である彼らも例外ではない。





「うわ……随分と張り切ったね」
「当然でしょ?蓮と過ごす初めてのクリスマスだもの!」
「……そんなカワイイこと、言わないでくれる?」
「へ?」
「せっかく作ってくれた料理より先に、キョーコを食べ」
「今すぐ食事にしましょうっ!」(ぐいっ)
「……別にいいけどね?どうせ後でいただくことには変わりないし」(にっこりv)

(なんてこと言うのよっ!否定できないけどっ///)

和やか?な雰囲気でテーブルにつく二人。
用意されたディナー――牛ほほ肉の赤ワイン煮、ブロッコリーとくるみのタルタルサラダ、海の幸マリネ、ミックスオリーブバスク風、サーモンのテリーヌ、そしてバゲット――は、ケチのつけようがない素晴らしい出来栄えだ。
シャンパンはキョーコの味覚に合わせたフランボワーズ。蓮の味覚だとドン・ペリニヨンあたりがしっくりくるのだが、キョーコには辛すぎるので却下。

「メリー・クリスマス」の掛け声を交わし、仲良く談笑しながら食事を始める。
そしてあらかた片付いた頃――

「でも、本当にこれで良かったの?満足できてる?」

と、蓮は尋ねた。『これ』とは、彼のマンションでクリスマスを過ごすことである。


キョーコは「恋人とホテルでディナー」に憧れているものだとばかり思っていた蓮は、彼女が「蓮のマンションで二人だけのクリスマスを過ごしたい」と言ってきた時には驚いたものだ。
蓮としては大変嬉しい言葉なのだが、付け足された「お金のかかったクリスマスはしたくないの。だからプレゼントとかもナシね?」という内容には思わず「どうして?」と尋ね返してしまった。それも当然だろう。蓮はアクセサリーなどのプレゼントを買うつもりだったのだから。
だが、彼女の「二人だけの時間をプレゼントにしたいの///」という言葉に負け、その提案を受け入れたのだった。

尋ねられたキョーコは破顔一笑し、

「いーの!私がお願いしたことなんだからv」

と答える。
その様子があまりにも可愛くて、蓮はそっと彼女を抱き寄せた。そして、隠しておいた箱をキョーコに手渡す。

「??何これ?」
「キョーコ……これ、受け取ってくれないかな?」
「……え!?な、なんで?『プレゼントはナシにしようね』って……」
「うん、わかってる。だからこれは『クリスマスプレゼント』じゃないよ。キョーコは手料理を振る舞ってくれただろう?その分のお礼v」
「でも私……何も用意してない…」
「いいんだよ、俺が受け取って欲しいだけなんだから。ね?」
「……うんっ!ありがとう、蓮vv」

何だかんだ言って、やっぱり好きな人からの贈り物は嬉しいもの。キョーコは素直にお礼を言い、その箱を受け取った。

「開けてもいい?」
「どうぞ?」

ガサ ゴソゴソ パコン

「――わぁ、可愛いvv ピンクローズの色よね?」
「正解。キョーコの唇には、そういう色が似合うと思ってね」
「そ、そうかな?////」

蓮からのプレゼント。それは花が咲いたようなピンクローズのリップスティックだった。
しげしげと見つめていることしばし――


「実はね、その贈り物にはお礼以外の意味も込めているんだよ」
「へ?他の意味……?確かピンクローズの花言葉は……」
「『魅惑』……確かにそれをつけたキョーコには魅惑されるだろうけど、普段から魅惑されてるんだから今更だろう?」
「なっ…///」
「残念だけど、花言葉じゃないよ。
別に今すぐ気付いてもらおうとは思ってないし、そのうち気付いてくれればいいから」
「むぅ…」

(う〜ん……蓮はこんな素敵なプレゼントを用意してくれてたのに、すぐに気付いてあげられないのって気が引けるなぁ…………あ!そうだっ)

「ねぇ蓮!ちょっと、後ろ向いててくれない?」
「後ろ?別にいいけど……なんで?」
「いいからいいからv」





「蓮、こっち向いていいわよ♪」

後ろを向くこと十数秒。キョーコの許可を得て振り返った蓮は、思わず息を呑んだ。


視線の先には、蓮から貰ったルージュをつけて微笑む彼女の姿。蓮の予想通り、贈ったルージュはキョーコの愛らしさを損なわず、十分に引き立てていた。
蓮はふわりと微笑を浮かべる。

「……よく、似合ってるよ」
「ふふっ、ありがとv」(チュッv)
「っっ!?」
「プレゼントのお礼っ/// プレゼントの意味は後でちゃんと調べるから、今はこれで許してね?///」

薄っすらと頬を染め、上目遣いに見つめてくるキョーコ。
数え切れないくらい交わしてきた口付けも「キョーコから」というのは大変珍しいもので、不意打ちを食らった蓮も反射的に紅くなって呆然としている。
(それを目にしたキョーコが「うわぁ、蓮が紅くなってる……明日は雪かしら?」なんて失礼なことを考えていたことは秘密v)


我に返った蓮は、神々しくも甘やかな表情でキョーコを抱きしめた。

「…………こんなに早く、返事をくれるとはね」
「は?返事?」
「――秘密。
さて、続きはベッドかなv」(ひょい♪)
「〜〜〜〜〜っ///// は、はい……///」

お姫様抱っこされたキョーコはそのまま寝室に運ばれ、食事前の宣言通り美味しくいただかれることになった。







ルージュのプレゼント――それは「キスで返して?」という無言のメッセージ。











憧れのサイト、『百花繚乱』の蕾様が開かれているクリスマス企画中の「企画参加者限定フリーCG」が欲しいためだけに作りました(笑)

クリスマスに全く興味がなかった管理人。
参加したくても何を書けばいいのかわからず途方に暮れていると、どっかで聞いたことのある口紅のプレゼントにまつわる話を思い出し、「よし!これだ!」と一種の現実逃避に走った結果がコレです。
なので世間一般のクリスマスとはズレた内容になっていると思いますが、どうかお許しを!

ちなみに題名は某ジブリ作品から(笑)