カルアミルクの罠






「れぇ〜ん〜v」
「なんだい、お嬢さん?」
「だぁ〜いすきぃ〜〜vv」
「俺も好きだよv キョーコvv」








やってろバカップル。



――と言いたいところだが、明らかにキョーコの様子がおかしい。
頬は薄っすらと上気し、瞳は程好く潤み、呂律が回っていない。




そう――キョーコは酔っ払っていた……






事の起こりは、蓮のちょっとした好奇心であった。
普段からしっかりもので、露骨に甘えるということをしないキョーコが酔ったらどんな行動をとるのか。
そんな考えがふと頭をよぎったのだ。

だが、キョーコは未成年。飲酒が禁止されている年齢である。
そういうところは絶対に譲らない性格なのは、蓮が誰よりも知っている。しかしその一方、どうしても試してみたい気持ちもある。


そこで、蓮はお得意の策略をめぐらすことにした。









「何やってるの?蓮」


お風呂から上がってきたキョーコは、台所で何かをしている蓮の姿を見て眉をひそめた。
蓮と台所――これ以上不似合いな組み合わせもないだろう。キョーコが不審に思うのも無理はない。

「ん?そろそろキョーコが出てくる頃だろうと思って、コーヒー牛乳を入れてたんだよ。飲むだろう?」

と言い放った。
それはもう極上の紳士スマイルで。
それを見た瞬間、キョーコが構えたのは当然の反応。

「な、なんか……すっごく怪しいんだけど。(特にその笑顔が!)」
「ひどいなぁ。いつも俺の湯上りに合わせてアルコールを準備してくれてるキョーコに、感謝の気持ちで用意してたっていうのに」

さすが俳優と言うべきか、キョーコの態度を見てすぐさま苦笑を浮かべる蓮。
それを見て、警戒していたキョーコも申し訳なさそうな表情になる。

「あ、ごめんなさい。蓮の心遣いに気付かないでひどいこと言っちゃって。
ちょうど喉も渇いてたし……うん、いただくわ」
「そう?じゃあ、はい」(にっこり)

まんまと、手にしていたモノをキョーコに飲ませることに成功する。
無論のこと、これがただのコーヒー牛乳であるはずがない。


アルコールに関してほとんど知識を持っていないキョーコを騙すには、どうしたらいいのか。
答えは簡単。見た目も匂いも味も、アルコールだとわからないものにすればいい。それに最も適しているのはカクテルである。
そして、今回抜擢された品が『カルアミルク』だった。

カルアミルクはその名の通り、メキシコ産コーヒー風味のリキュールであるカルアとミルクで割ったカクテルであり、味は完全にコーヒー牛乳。
これならバレることなくキョーコに飲ませることができると踏んだ蓮は、カルアと一緒にコーヒー牛乳も購入していた。牛乳は冷蔵庫に買い置きしてあるし、つい最近、コーヒー牛乳が飲みたいとキョーコが言っていたことを覚えていたのだ。
これで、蓮がコーヒー牛乳を入れていたとしても全く違和感はない。

――どこまでも抜け目のない男、敦賀蓮。

こうしてコーヒー牛乳の姿を借りたアルコールを一気に摂取したキョーコは、見事に酔っ払ったのである。






「うふふ〜♪なんかきもちい〜わね〜」
「おっと……危ないよキョーコ。ほら、こっちへおいで?」
「は〜いv」

すっかりフラついているキョーコを抱き寄せ、お姫様抱っこでソファまで戻る。
余程その体勢が気に入ったのか、キョーコは一向に離れようとしない。むしろ、蓮の首に腕を回し、しっかりとしがみついている。
こんなキョーコは初めてで、蓮は思わず顔がにやけてしまう。


「れん〜」
「ん?」
「しばらくこのままでいて〜」
「もちろん。しばらくと言わずに、ずっとこうしてたらいいよ」
「じゃ〜そ〜するぅv」


キョーコのあまりの可愛さに理性が飛びそうになるが、グッと我慢する。いくらなんでも、正気じゃない彼女に手を出すわけにはいかない。
しかし普段ではお目にかかれない甘えっぷりに、つい理性が負けそうになるのも事実で。


理性と本能のジレンマに陥っていた蓮だが、いつの間にか穏やかな寝息をたてるキョーコの姿を見て、ようやく理性が本能を上回ったようだ。
すっかり眠り込んでいる彼女をベッドルームまで運び、首に回っている腕を外そうとしたが外れない。
仕方がないのでその体勢のまま横になり、キョーコの寝顔を優しい表情で見つめる。







「…………まずいな…クセになりそうだ……」









(強制終了!!)

ザーーーーーーーっ(*´д`*)
これ、糖度高くありません?ていうか、蓮様それは犯罪です。
どうせやるなら最後までやりバキッ!……ポイッ!(/TДT)/ ⌒□


最近【甘々】が書き切れてないので、気合入れてみましたが……まだまだですかね?