馬の骨







「なぁ蓮。俺、ずっと考えてたんだ」
「何をですか?」

「どうすればお前の鈍さを改善できるのか











そう、俺はずっと考えていた。












明らかにキョーコちゃんに対して恋愛感情を持っている蓮。
世間では「芸能界一のいい男」「抱かれたい男ナンバー1」と絶賛されているが、その実見た目だけ恋愛百戦錬磨、天然キザ男、救いようのない恋愛音痴であるのがこの男、敦賀蓮である。
そのため自分の気持ちに全く気付いていない。周りにはバレバレだってば。

そんな蓮に何とか自覚して欲しくてあの手この手を使ったが、何故か空回り。
その原因についてはもう鈍いからとしか言いようがない。


斯くなる上は自覚させるなどという無謀な真似は一先ず置いといて、焦らせることから始めよう、という結論に至った。
その俺の決意も知らず蓮のヤツは、

「またその話ですか……何度も言ってますが、あの子に対して特別な感情は持ち合わせていませんよ」

などとのたまった。




「……ハァ。それはもうこの際置いとくけどさ。
お前、キョーコちゃんに言い寄る男が出てきたらどうする気だ?」
「以前言っていた『馬の骨』ってやつですか?どうって……別にどうも。まぁ、事務所の先輩としてどんな男かは確かめるでしょうけど」

だからそれが恋愛感情なんだよ。

「普通、ただの後輩のプライベートにまで口を挟まないぞ?」
「俺は彼女のことを多少知っていますからね。妹を想うような気持ちですよ」

マテ蓮。兄は妹に対してあんな愛しそうな視線を向けない。向けたらそれこそ犯罪だ。

「妹、ねぇ……
じゃあさ、兄としてでもいいからちょっと俺の質問に答えてくれないか?」
「ええ、いいですよ」










よしかかったぁぁぁぁぁっ!













<まずはほのぼの系>


「実はさ、ブリッジロックのリーダーの石橋君がキョーコちゃんに気があるって噂を聞いたんだよね。どうする?」
「……えっと……ぶりっじろっく…いしばし…石橋」(ポチポチポチ)
「オイ、一応同じ事務所のタレントだろ」
「すみません、自分に関係ないことには興味がないもので。でももう大丈夫ですよ、しっかり覚えましたから。この背の低い人ですか……この程度の男に、彼女はやれませんね」


ゴメン、石橋君。蓮のブラックリストに載せてしまったよ……いつか必ず謝罪するから。








<次はヒョーキン系>


「そ、そうか。じゃあさ、ここからは仮定の話なんだけど……新開監督が相手だとしたらどうだ?監督、随分とキョーコちゃんを買ってただろ?」
「新開監督ですか?……そうですね、映画界での地位や才能については評価できますが…彼は結構腹黒ですから。あのときの演技対決を見てもわかるでしょう?彼女の苦労を考えると賛成できませんよ」


新開監督……腹黒に腹黒と言われたらお終いです。









<ならチンピラ系>


「え〜と……黒崎監督は?彼もキョーコちゃんの才能に興味を持ってるって聞いたけど」
「黒崎監督って、あの社長といい勝負の個性を持った人ですよね?どこからどうみてもチンピラの。ダメですよ絶対。ただでさえ余計なこと(中指おっ○て)を覚えてしまってるんですから。それに、過去に何かありそうな気がしてならないんです。彼女を任せるならもっとまともな人生歩んできた人じゃないと」


過去間違いなく人に言えない人生を送ってきている蓮のレーダーにかかりましたよ、黒崎監督。あなた何をやってきたんですか。









<これでどうだ小動物系>


「……緒方監督は?」
「とてもいい男性だと思いますよ」
「へぇ!初めて蓮が褒め」
「それにしても、彼は社さんと同じ事を言いますよね。『京子さんのこと、どう思ってるんですか?』とか『敦賀君って結構鈍いんですか?』とか。社さん、何か吹き込みました?」


……緒方監督、良かったですね俺属性で。蓮の標的から外れてますよ。








<どうにでもなれ禁句系>


「じゃあ…………不破…尚……とか?」
「……………………………………」
「れ、蓮?」
「ありえませんね。問題外です。仮にそんな事があったときには、俺が責任を持って排除しますよ。いや、むしろ彼女自身が排除するでしょうし俺はその後片付けにでも徹しましょうか」(にっこり)


不破……悪いことは言わない。今すぐ逃げろ!!
命の保障どころか地獄への片道切符むしろ特急券が用意されてしまっているぞ!









「で、社さん。結局何がしたかったんですか?」
「……いや、悪かった。もう忘れてくれ」
「はぁ。別に構いませんが……じゃあ、そろそろ帰りますね?」
「ああ、お疲れさん」
「お疲れ様です」












――こうして俺の「馬の骨を宛がって蓮を焦らせろ計画」は失敗に終わった。

そりゃそうだよな。俺は勘違いをしていたんだ。
蓮は鈍いから焦らないんじゃない。真髄の腹黒だから焦らないんだ。
しかも無意識で馬の骨候補を蹴散らしてるんだから性質が悪い。


……よし!次は腹黒鈍感男用の計画を練るか!











あっはっはっはーv
……すみません、思いっきりギャグです。ギャグでしかありません。
蓮的『馬の骨』とは誰かなーと考えてたら、こんなものができちゃいましたよ♪

読まれた方、許してください……っ(/-\)