クラースさんの料理教室





未来に渡り、すずも仲間になった後のある日――


クレスとミントはアイテムの補充に出かけ、チェスターはどこか(秘密特訓)に向かい、アーチェは遊びに行き、すずは……考えないでおこう。
クラースは一人、部屋で魔術書を読んでいた。

だが、昼も過ぎてしばらく経った頃、不意にアーチェが戻ってきた。


「ねえねえ、クラース!ちょっと頼みがあるんだけどさぁ」
「どうした?お前さんが私に頼みなんて珍しいじゃないか」
「そっかなぁ?……まあどうでもいいじゃん!それよりさぁ、あたしに 料理教えてよ!

チッチッチッチッチ……(時間の過ぎる音)

「な、ななななな何を言い出すんだ!お前、私達を殺す気か!?
「ライトニング!」
「うわぁっ!?あ、危ないじゃないか!私はチェスターと違って人間なんだぞ!?初級魔術でも十分ダメージを喰らうんだ!」

※注:チェスターも人間です。

「うっさい!クラースが失礼なこと言うからじゃん!」
「し、しかしなぁ」
「アイスニ」
「待て待て待て!わかった!協力しようじゃないか!」
「そう?んじゃ、早速いってみよー!」


とまあ、アーチェの頼みという名の脅しによって、クラースの災難が始まる……







二人は宿屋の人に許可をもらい、厨房を借りていた。
クラースとしては断ってもらえた方が良かったのだが……


「それで、一体何を作りたいんだ?フルーツ系ならお前さんの方が得意だから、他のものだろう?」
「実は、どれから手をつければいいのかわかんないんだよねー」
「…やれやれ。それじゃ……『ハンバーガー』はどうだ?」
「『ハンバーガー』ぁ?そんなん、ただパンに肉を挟むだけじゃん!」
「それの熟練に一番時間が掛かっているのは誰だっ」
「う゛っ……わ、わかったわよ!」

アーチェはしぶしぶと了承する。
だが、クラースの言葉は正論だ。決して料理が得意とは言えないクレスでさえ20回成功すればいいのに、アーチェにいたっては50回も成功しなければならない。
……彼女が世のファーストフード店で働いたら、さぞかし食中毒者が続出するだろう。

「とりあえず、いつも通り作ってみるんだな。それを見て助言しよう」
「オッケ〜」


そうして、まずは『ハンバーガー』の材料を用意し始め………………

「待てっアーチェ!ブレッドとチキンだけでいいだろう!キャベツはレタスの代わりと見れんこともないが、どうしてマグロと昆布とミソが出てくる!?
「斬新な発想ってやつ?」
「斬新な発想というのは普通のものができるヤツがするものだ!」
「え!?そうなの!?」
「…………とにかくブレッドとチキン以外は戻して来るんだ」
「う、うん」

出始めから不安になるクラース。

「えっと…準備できたよ」
「……ああ。それじゃあ始めてくれ」


まずはブレッドを上下半分に切り、ブレッドを軽く焼……

「ファイアボ」
「待てぇぇぇぇっ」

いきなりファイアボールで炒めようとするアーチェを全力で止めにかかる。
こんな厨房の中で魔術を発動させるのはまずい。というより、そもそも料理に魔術は使わない。

「何をやっとるんだお前は!?」
「何って……ブレッドを焼こうとしてたに決まってんじゃん。見てわかんないの?もう老眼?」
私はまだ20代だ!「三十路一歩手前じゃん」うるさいっ!
だいたい、ファイアボールなんか使ったら炒める前に黒焦げになるだろう!
「おおっそっか!」


やっと納得したのか、彼女は普通にフライパンを用意する。そして油をひき……

「ストップ!」
「あによ?」
「何だその油の量は!?」

炒める程度なら油は焦げ付かないよう少量使用するだけでいい。だが、アーチェはフライパンに並々と注いでいた。

「お前は揚げパンでも作る気か!?」
「んなわけないでしょ!」
「だったら油は少しでいい!その油は揚げ物用の鍋に移しておけ!」
「……はーい」





何とかブレッドを炒め(というか焦がし)、次はチキンを焼く準備に入る。

「ファイ」
「待たんかっ」

性懲りもなくまたファイアボールを使おうとするアーチェに、先程より早くツッこむクラース。

「またぁ?今度は何?」
「『何』じゃない!さっきも言っただろう!料理に魔術を使うな!」
「だってメンドくさ」
「つ・か・う・な」
「……はい」





――さすがにブレッドで同じ作業をしたからか今度はスムーズにことが運び(とは言ってもやっぱり黒焦げ)、あとはブレッドでチキンを挟むだけなのだが……

「……アーチェ(怒)」
「なに〜?」
「どうしてさっき片付けたはずのミソがチキンに塗られ、昆布が挟まっているんだ!?
「やっぱ一味違うものの方がいいかなーって思ってさぁ」
「やめんかっ」







アーチェに料理を教えると言うことが如何に無謀なのかということを、身にしみて感じたある日の出来事――










<おまけ>

「チェスタァァァァァァ!あたしの作った『ハンバーガー』が食べれないってーの!?」
「当たり前だぁぁぁぁぁ!昆布が見えてる時点でどう考えても『ハンバーガー』じゃねぇだろが!」
「大丈夫よ!ちゃんとクラースに見てもらってたんだから!」
何!?クラースの旦那……こんなキテレツなもん教えたのかっ!?」
「私の言うとおりに作ってない!」
「それじゃ意味ねーだろっ!!」
「うっさい!いいから食べなさいよ!食べないとビッグバンを放

「「待てぇぇぇぇぇぇっ」」











なんでしょーね、これ……i|||i_| ̄|○i|||i
アーチェに料理を教えるとしたら、絶対こうなりそうだと思うんですけど……どうでしょうか?