痴話ゲンカから学ぶこと





それは、ありていに言えばいつもの光景だった。

「……ろぉ〜にぃ(怒)」
「げっ!ナ、ナナリー…どうしてここに……」
「あんたってヤツは…最後の最後まで……っ」
「あああああのっ、ナナリーさんっ、指はポキポキ鳴らすものじゃ…」
「このドスケベがぁぁぁぁっ」
「うわっ!ま、待て!その関節はそっちの方には曲がらっ…アァァァァァァ〜ッ」







一行は、最終決戦の場である「神のたまご」に向かう前にアイグレッテへ立ち寄っていた。
ハロルドは宿屋で時折爆発音の聞こえる実験を行い、ジューダスは同じく宿屋でその音に多少手元を狂わせつつ剣の手入れ、カイルとリアラは仲良くデート、ナナリーはアイテムの補充のため雑貨屋に。
そして、ロニは――

「そこの美しいお嬢さん、僕とそこでお茶でもどうですか?」
「麗しいそこの方、私と食事でも?」
「清楚溢れる司祭様、その細腕で運ぶのはお辛いでしょう?この私がお持ちしましょう」
「ああ、そこの……」

もはや病気とも言えるいつものナンパを街中で繰り広げていた。
むろん、結果が全敗であることは言うまでもない。


そして、これももはや日常。ナナリー、ロニのナンパ現場を目撃。
ここから先は冒頭の通りである。







「……なんだ、生きてたのかい」
「おまえ…最初の一言がそれか……」
 

あの後ロニがオチるまで関節技を極め、気を失ったロニをそのまま放置して宿屋に戻ったナナリー。
夕刻になり、宿屋にある食堂でロニがいないことを誰一人気にせず食事を始めようとしたその時、体を引き摺りながらロニが戻ってきた。

ジューダスはその様子を冷ややかに見つつ、

「どうせいつものようにナンパしていたところをナナリーに目撃されたんだろう……多少、いつもよりは酷い気もするが」
「多少なもんか!間違いなく死ぬ一歩手前まで逝ったわっ!」
「ってことは、死の世界をさ迷ってきたってことね☆
はいロニ、後で解剖けってー♪
「ちょっと待てぇぇっ」
「嫌v」
嫌vじゃない!」
「やめろハロルド。こんなバカでも最終決戦を前にいなくなるのはマズイ」
「誰がバカだ!」
「あんたに決まってるじゃないか」
「てめぇ、ナナリー!もとはと言えばおまえのせいだろうが!この男女!」
「……なんだってぇ!?」

その一言にナナリーが切れた。(ちなみにハロルドはそれはもう楽しそうにメスを研いでいる

「この期に及んで人のせいにする気かいっ!しかも誰が男女さ!」
「おまえが俺に関節技掛けたのが悪いんだろうが!そしておまえは立派な男だ!」
「あたしはだよ!」
「あんだけ関節技が使えりゃ男で十分だ、このサブミッション使い!」
「あんたが軟弱なのがいけないんじゃないか!」
「俺が軟弱なわけないだろうが!この六つに割れた腹筋が見えないのか!?」
「割れてるからってなんだい!割れてりゃいいってんなら、今すぐその頭を割ってやろうか!
「あ、その役私にさせて〜☆」
「待てっハロルド!割れるべきは腹筋であってじゃない!」
「そんな細かいこと言わ」
「細かくないわっ!」
「いいよ、ハロルド。あたしがオトすからその後でやりなよ」
「了解〜♪」
「勝手に決めるな!
大体ナナリー!俺にばっか関節技使わず、偶には戦闘で使ったらどうだ!弓でチクチクやるよりよっぽど効果的だ!俺が保障するっ」
「バカなこと言ってんじゃないよ!できるわけないだろっ」

かなり無茶苦茶なことを言い始めたロニに反論するナナリー。
そんな二人の怒鳴り合いを聞きながら、話に全く参加していないカイルとリアラは、

「……ねぇリアラ」
「どうしたの?」
「モンスターって…関節あるの?
「……そういえばそうよね。うーん…獣系とかならあるんじゃないかしら?」
「でも、人間と同じようにはいかないんじゃないの?」
「あ、そうかも……」


なんて不毛な会話を二人だけで繰り広げるその一方、もう一つの会話は続いていた。


「間違いねぇって!俺は知ってんだ!的の小さい敵には矢が当たってねぇんだよおまえ!」
「なんだってぇ!?まるであたしの腕が悪いみたいじゃないか!
それに当たる当たらないを言うんなら、あんただって人のこと言えないよ!なんだいあの割破爆走撃って技は!突進するのはいいけどほとんど敵をすり抜けてるじゃないか!
あれはあれでいいんだよ!特技の説明見てみろ!『前向き奥義』て書いてあるだろうが!」
「何の話だい!?」(メニュー画面での話です)
「食事くらい静かにとれんのか、貴様ら」

この一言が、ジューダスの運命を大きく変えることとなる。(『後悔先に立たず』とはよく言ったものだ)

「ジューダス、おまえも何か言ってやれ!同じ技を何度も使うと『馬鹿の一つ覚えだな』なんて何度聞いても腹の立つセリフを言うおまえだ。戦闘に関しては厳しい評価が出せるだろ!」
「な、なぜ僕が……」
「バカ野郎!もうすぐ最終決戦だぞ!?だったら今のうちに戦闘中の不満を言っておいた方がいいだろうが!」
「いいんじゃな〜い?戦闘に関することは命にも関わってくるっしょ☆」
「そうだね、だったら言わせてもらうよジューダス!あんた、もっと体力つけな!中衛のあんたが後衛の――しかも女の子のリアラより体力値がないのはどういうことだい!
ピーマンニンジンを食べないからだよ!」
「それは関係ないだろう!」
「あら、あるかもしれないわよ?ニンジンの主成分であるサポニンには増血作用と蛋白質の代謝促進作用があるし、血圧を正常に整える働きで疲労感にも有効、体内細胞を正常に保ちウイルスの侵入を防いでくれるわ。ピーマンは野菜に珍しくスタミナを高めるビタミンEが含まれてるし、ビタミンAの素であるβカロチンが豊富で、免疫力を高」
「「「もういいから止まれハロルド」」」
「もういいの?つまんなーい」

いきなり小難しい話を始めたハロルドをこの時ばかりは全員一致否決なしで止める。
ロニとナナリーにとっては頭の痛い話であり、ジューダスにとっては聞くも耐えないピーマンニンジンの話である。それは止めもするだろう。


「とにかく!僕は体力の無さを技術とスピードでカバーしている!僕よりも問題なのはハロルドだ!」
「あら何?私の戦い方に文句があるわけ?」
「当たり前だ!強敵を前にして『データ採取っ』なんてどこかのサーチガルド女みたいなことをするな!」
「(サーチガルド?ガルドを探せ?……まいっか☆)
なによ、データがあった方がその後の戦いでは楽できるっしょ?」
「後のことを考えるより先にその戦闘での回復を考えろ!」
「あ☆データといえば「人の話を聞け!」あんた真神煉獄刹使うときに仮面割れるわよね?でも、戦闘が終わったらいつの間にか元通りだし。
ずっと気になってたのよね〜♪自己再生能力でもあるのかしら?ねねっ調べさせて調べさせてっ。ていうか解剖させてv
「断固拒否する!」


「……ジューダスは技術で何とかしてるとしても、問題はカイルだよね」
「え!?オレ!?」

我関せずでリアラと楽しく食事していたカイルだが、ナナリーの一言により彼もまた巻き込まれることとなる。(ジューダスとハロルドは仮面を巡って抗争中←ハロルド優勢の模様)

「そうさ。体力には問題ないけど、攻撃や特技、奥義を考えなしに使いすぎだよ。すぐにスピリッツ切れして動けなくなってるじゃないか」
「……そうかなぁ?」
「おい、ナナリー!カイルを巻き込むんじゃねーよ!」
「なんだい!ジューダスは平気で巻き込んどいて、カイルは別だって言うのかい!?」
「当たり前だ!俺のかわいい弟見るからに怪しい仮面のニヒル小僧を一緒にすんな!」
「ちょっと、ロニ!カイルは私の英雄なんだから手を出さないで!」
「待てリアラ!変な誤解をするな!」
「嘘よ!カイルと一緒のときに限って秘奥義の震天裂空斬光旋風滅砕神罰割殺撃を失敗するじゃない!あれはカイルのこと見てるからなんでしょう!?」

その言葉に目を丸くするナナリー。言われてみればその通りである。
しかもデッキブラシだとなぜか二分の一の確率で失敗する。
だが、それもカイルがいるという大前提の中での話。


「ンなわけあるかぁぁぁっ」
「そうだよリアラ!アレはオレを見てるからじゃないよ!」
「カイル〜おまえだけは俺のみ」
「ただオレにイイとこ見せようとして空回りしてるだけなんだ!」
「……カイル(涙)」
「あら、そうだったの?良かった、わたしの勘違いだったのねv だったらロニ。これからもカイルと一緒に前衛にいてもいいわよ、カイルの壁としてv
「リ、リアラさん?」

微妙に黒い発言を天使の微笑を浮かべながらのたまう聖女様。さらに、

「ロニったら体力しか自慢できるところないんだものv 戦闘中は誰とは言わないけど脂ギッシュな肉団子と同じ武器を振り回してるのにほとんど当たってないなんて、ほんとナナリーのこと言えないわよ?しかもゴースト系が出ると悲鳴上げて真っ先に逃げちゃうんだから、カイルの保護者を名乗っちゃダメよv
ジューダスも手数が多ければいいってものじゃないわv 中衛って立場に甘えたらダメだと思うの。そもそも自慢の手数だけど奥義出す度に敵の止めもさせてないまま決め台詞をつぶやき、あまつさえ動かないのはまずいんじゃないかしら?それでいつも余計なダメージを受けてるのよv
その点、カイルは多少抜けてるとこはあるけど、スピードはあるし、一撃の重さもそこそこあるものv」





――このとき誰もが思っただろう。リアラは黒いと。(そしてカイルにだけ甘い
事実ロニは盛大に震えながら一歩どころか壁際まで下がり、仮面争奪戦を繰り広げていたジューダスも大量に冷や汗を掻きつつこちらを見ている。

初めてといっていい沈黙が一行に訪れる。(あまりいい意味ではないが)
これで、この馬鹿げた会話という名の罵り合いに終止符が打たれると思った。





――が。


バルバトスっていえばさ、ダイクロフトで戦ったとき後衛ほとんど役に立たなかったよね。晶術使うたびに詠唱なしでカウンターもらってたし。あ、リアラは別だよ?アイテム係してたもんねv
「あらv ありがとうカイルv」

天然カイル、問題発言。
しかもちゃっかりリアラのことはフォローしている。(バカップルめ!)


この言葉がリアラ以外の女性陣の怒りを買ったのはむしろ当然。

「へぇ〜そういうこと言うんだね?そうかい、カイルはこれからの野営で食事はいらないんだね?」(にっこりv)
「え!?なんでっ!?」
「んっふっふっふv よかったわね〜ロニ、ジューダス♪あんたたちより先に解剖しなきゃだめなアホがいたわ★」(キラーン☆)
「ええっ!?確かにオレバカだけど解剖はヤダよ!」
「「問答無用!!」」
「だからなんで!?」

カイルは(リアラを除いて)最も敵に回してはいけない二人に目をつけられた。しかし悲しいかな、本人は何故二人が怒っているのかわかっていない。
天然とはかくも哀れなものなのか。








こうしてカイルの尊い犠牲で史上稀に見る馬鹿げた争いは終わった。
元々はロニとナナリーの痴話ゲンカから始まったものだが、最後に被害を被ったのは一番事態を把握していない天然のみ。


二人の機嫌が直るまで、責任の発端であるロニは謝罪とばかりに彼女いない暦23年一人暮らしで上達した料理の腕を振る舞いカイルのおかげで仮面が無事だったジューダスは戦闘時中衛の立場を活かしてハロルドの暗器からカイルを守りカイルの愛を感じたリアラは他の男性陣には目もくれず常にカイルの援護と回復をし続けたことは本人たちしか知らない。








教訓:口は災いの門











ナオ様にリクエストしていただいた(むしろさせた)「TOD2でギャグ・ロニとナナリーのケンカに巻き込まれ、男3人vs女3人」でした!

……あれ?男vs女?ホントに?カイルとリアラはケンカしてない!?一応他二人を貶しあってるけど!しかもリアラ黒いよ!Σ(・Д・)
ナオ様は「ハロルドで勝利!」を予想されていたようですが……書くのはこのバカ管理人。ハロルドの天才振りを書ききれません(笑) 怪しさだけは表現できたと思うのですが(爆)
結局カイルたんのおバカに何とかしてもらいました。
内容は管理人がプレイ中に思わずツッコんだ戦闘中の問題点。というか、恐らくプレイした人なら一度は思ったことじゃないかと。


えっとナオ様、こんなワケのわからないもので宜しければ煮るなり焼くなり好きにしてください!ただし煮ても焼いてもどうにもならない駄文です!