The King of Devoted Husbands





先月、歴史に残るであろう盛大な結婚式が行われた。今や芸能界での地位を不動のものとしている名俳優・敦賀蓮と、同じく名女優・京子の結婚式である。
どんな内容であったかは、あの宝田社長が全面的にプロデュースしたと言えば……もう言葉など必要ないよね?俺はアレを見て、俺と奏江さんのときはどんな手を使ってでもお断りしようと心に誓ったよ。


間違いなく無駄だけど。


……まあそれはともかく、俺は二人の結婚を心から祝福した。長年二人を見守ってきた者として、蓮の親友として、ね。
でも、これでやっと蓮の惚気から解放されると思ったことも事実さ。この数年、砂吐き過ぎて口の中が常にザラザラしてたし、周りへの被害防止対策の所為で胃薬常備するようになっていたからなぁ……あいつも結婚という節目を迎えれば、少しは落ち着くだろうと考えていたよ。



――が、俺は自分の甘さを思わず呪ったね。
蓮の惚気度は収まるどころか倍増してしまった……










<朝・現場へ移動中>

「もしもし?俺だけど」
『蓮?どうしたの?』
「いや、今日は予定外に時間が早まった所為で朝のアイサツができなかっただろう?」

それは悪かったと思っている。でも、それは俺の所為じゃないんだ。だからそんな凄みを利かした声を出さないでくれ。
お兄さん、ちょっぴり心臓麻痺を起こしそうだよ。

『蓮ったらそんなことで電話してきたの?』
「『そんなこと』なんかじゃないよ?俺にとったら何より大事なことだ」
『もうっ///』
「それでね?このままだと仕事に支障を来たしかねないから、電話越しにアイサツしようかなって」
『えっ!?で、電話越しに!?』
「ああv」
『〜〜〜〜〜っ//// わ、わかったわ……社さんの身が心配だし

ありがとうっキョーコちゃんっっ!心から感謝するよ!!

「さぁどうぞ?奥さん?」
『〜〜〜っい、行ってらっしゃいv アナタvv』(チュッ)
「行ってくるよvvv キョーコv」(チュッ)

ザッパーーーーーーーーッ!!(砂を吐く音)

れ、蓮……っ!いくら俺に耐性があると言ってもこれはあんまりじゃないか?むしろそれくらいの時間なら喜んで待っててやるから家でやってくれ!

『/// こ、これでいい?』
「ああv」
『もう社さんに迷惑をかけちゃダメよ?しっかりお仕事してね?』
「わかったよv」
『それじゃ、私もそろそろお仕事に行くわね』
「行ってらっしゃいvv」





「……どうしたんですか?社さん。
糖蜜をまぶしたガトーショコラを混ぜたココアを飲んだ後みたいな顔をしていますよ?」
(飲んだことがあるのか?)いや…何でもないよ……」
「?とにかく現場に急ぎましょうか。キョーコに言われましたし
「ああ…そうだな……」(遠い目)







<昼・キョーコの愛妻弁当>

蓮…楽しみなのはよくわかるが……その男女問わず腰砕けになりそうな笑顔は止めろ。明らかに被害が出てるぞ。

「〜♪あ、社さん。見てくださいよ、キョーコの愛情たっぷりのお弁当v
「……ああ、見てるよ。(毎日な…)
今日なんて時間がなかったのに、それでもバランスを考えてくれてるのがわかるな」
「そうでしょう?たった10分で作ったとは思えませんよね?」
「10分!?」

蓮のお弁当はタンパク質・炭水化物・ビタミンなどの栄養素のバランスはもちろんのこと、カロリー計算までされていそうな中身である。
……これを10分?
キョーコちゃん…お兄さんは君のこともわからないよ……

「今までもキョーコのお弁当には愛情が詰まっていましたけど、今は愛妻弁当ですからねv これを食べると仕事にも力が入りますよ」

『情』が『妻』に変わっただけだろ。――なんて自分の首を自ら絞めるようなことは言わないけどね。
っていうか、お前が食事をとらなかった過去が夢じゃないかと疑いたくなるよ。





……とまあ、俺が犠牲になることで周りへの被害を最小限に抑えつつ昼食を終えると、蓮は徐に携帯を取り出した。
いつもの如く、お弁当の称賛と感謝をキョーコちゃんに伝えるためだろうな……

「この時間だと……仕事中か。仕方ないな…」(ポチポチポチポチ)
「今日はメールか?」
「ええ。留守電に入れてもいいんですけどね」(ポチポチポチポチポチ)
「……いや、メールにしておけ」

じゃないと、絶対に電話の向こうでキョーコちゃんの腰が抜ける。
メールならまだマシだろう。

「――送信完了、と。じゃあ社さん、戻りますね?」
「ああ、行って来い(むしろ行ってくれ)」







<夜・帰宅中>

「やっと終わりですね」
「ああ、ホントにな

あの後――仕事先へ移動する度にその道中惚気られ(これはもう日常)、仕事先では全てNGなし、脅威のスピードで予定を消化していった。
……そんなに早くキョーコちゃんに会いたいのか、蓮。いや、訊くまでもないな。訊いたら俺の身がもたない。

「社さんは、琴南さんのマンションに送っていけばいいんですか?」
「ん?ああ」
「キョーコが会いたがっていましたよ?最近お互いに忙しくて会えてないんでしょう?」
「らしいな〜。奏江さんも口にはしないけど、寂しそうにしてるよ」
「キョーコも随分と寂しがっていましたよ。
……なんだか妬けますね

まてマテ待てっ!
お前は奏江さんにまで嫉妬するのかっ!?どこまで嫉妬深いんだお前はっ!!

「やだなぁ、社さん。そんなに冷や汗掻かなくても大丈夫ですよ?半分は冗談ですから」

半分か!?なら残りの半分は本気なんだな!?

「――蓮?もし奏江さんに何かしたら……俺にも考えがあるぞ?
「だから冗談ですって。いくら俺でも社さんを相手にするつもりはありませんよ」
「ならいいけど…」
「まあ、それを抜きにしても琴南さんのことは気に入ってますからね。同じ俳優として」
「……蓮」

やっぱりお前は立派な俳優だな。仕事が絡めば私情を捨て――

「何より、彼女はキョーコの親友ですからねv」

――られないんだな、やっぱり。
お前はどこまでもキョーコちゃんバカだよ。(涙)


なんてやり取りをしつつ、俺は蓮に送り届けてもらった。









――これが今の俺の日常だ。
砂を吐く頻度は減るどころか倍増するし、胃薬はもはや規定量を超える勢いだ。


奏江さん……俺はそう遠くない未来に倒れそうだよ。









(終わってあげてください)

ジュキ様の2424hitリク、「蓮の愛妻家ぶり(甘さ・お惚気など)・ギャグ風味に」でしたv

いやー、見事に社さんが被害を被っています。が、黒さは健在のようですね(笑)
もはや蓮様が蓮様ではありません♪思わず「誰だアンタ」とツッコミましたよv ←オイ


さて、ジュキ様。ギャグ満載な駄文で申し訳ありませんが、煮るなり焼くなりお好きにどうぞ!