偶然の産物





「おや?」
「あっ…」
「げ」

世の中は広くて狭いとは良く言ったもの。
とんでもない数の人間が生活をしている東京にあり、多くの人間が出入りする広いテレビ局。
その中で全く違うスケジュールをこなす三人の人間が、偶然三方向から歩いてきて偶然出会うなんて誰が予想出来ただろうか。

たった今雑誌の取材を終え、次の仕事のためにテレビ局にやって来たのは、抱かれたい男・演技の実力No.1の敦賀蓮。

司会を務める料理番組の収録が休憩に入り、飲み物を買うために廊下を歩いていたのは、好感度・人気No.1女性タレントの京子。

歌番組のゲスト出演を終え、次回のライブの打ち合わせに向かおうとしてテレビ局を立ち去ろうとしていたのは、若手歌手ではNo.1の実力を誇る不破尚。

No.1をとるだけはあり、3人のスケジュールは過密。
そんな3人が、偶然にも出会ってしまったのだ――








「……」
「……」
「……」

最初の一言を発した後、三人は暫く黙っていた。
しかし、表情は全員違っていて。

にこやかな微笑をたたえる蓮。
それを睨みつける尚。
二人の様子を伺うキョーコ。

そんな状況に耐え切れず、最初に声を発したのはキョーコだった。
「おっ、おはようございます!敦賀さん!」
キョーコは深々と蓮に頭を下げた。
「おはよう、キョーコ…」
と、そこで蓮は言葉を止め、少し困ったように笑う。
「ああ、ごめん。仕事中は最上さんって呼ぶ約束だったね」
「ちょっ…それは今言わなくてもっ…!」
「でもつい夜のくせで…」
「あーっ!!ストップストップー!!」
キョーコは叫びながら、自分より相当身長の高い蓮の口を必死に塞ぐ。
…それははたから見れば、キョーコと蓮が密着しているという風に見えるわけで。
その光景を見てしまったテレビ局にいた人間は、その場に固まってしまった。
しかし当の本人たちは全くその事に気がついていない。
「どーして貴方はそういう事を軽々しく口にするんですかッ!?」
キョーコは蓮の口を塞いだまま、小声で抗議する。
「だってね…」
蓮は自分の口を塞いでいるキョーコの手を取り、その手のひらに口付けながらにっこりと笑う。
「あまりにもキョーコが可愛いから…家だとそんな可愛いエプロンつけてくれないだろう…?」
「んな…っ///」
「今度家でもそれ着てよ」
「や、やだぁ。これ動きにくいもん…」
「俺からのお願い。駄目?」
「…もぉっ///一回だけだからね!!」
「………お前ら」
「ありがとう、嬉しいよ」
「その代わり、蓮もご飯作るときは手伝ってね?」
「勿論だよ」
「いい加減に………」
「じゃあ今夜、家に来てくれるんだ?」
「その、予定…」

「いい加減にしろーッ!!俺の前でイチャつくんじゃねぇ―――――!!」

いつの間にか自分を無視して始められた会話の内容も、キョーコの言動も、蓮の反応も面白くない尚が絶叫する。

「第一…テレビ局だぞ…ふざけんな…」
息も絶え絶えに抗議する尚。
そんな尚を見て、蓮は可笑しそうにくす、と笑うと後ろからキョーコを抱きしめて言い放つ。

「どうした不破。ヤキモチか?」

「ちっ…違うに決まってるだろ!!第一どうして俺がヤキモチなんかやかなきゃいけねぇんだよ!!」
「ちょっと、れ…じゃない、敦賀さん!!抱きつかないでくださいっ!!」
「どうして?駄目?」
「駄目です。そういう事は家だけで十分です」
「残念だなぁ」
「残念も何も…」
「俺は無視かよオマエラ」

はたから見なくてもこの凄い光景に、テレビ局に入ってくる人間・テレビ局を立ち去ろうとしている人間が足を止め、三人の周囲に集まっていく。
どう見ても三角関係にしか見えないこの状況。
ましてや全員各ジャンルで一番人気を誇る芸能人。
誰もが足を止めるはずである。

ぎゃあぎゃあ騒ぐ三人を見ている野次馬達がひそひそと会話を始める。
「…それで、京子はどっちと付き合っている訳?敦賀蓮?不破尚?」
「敦賀蓮の方じゃないのか?抱きついてたし」
「じゃあ不破尚の片思い!?」
「もしくは男二人が女を取り合ってるんじゃないの?」
「マジで!?」
「真相はどうなんだよ!?俺、途中から見たからよくわかんねぇんだけど」
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その後、騒ぎを聞きつけて大慌てでやってきた三人のマネージャーの手により、芸能人三人は各仕事現場へと連行され、騒ぎは一応終わった。

しかし、この騒ぎが翌日の芸能面のトップを飾ったことは言うまでも無い…。











スキビサイト『Time-scape』のふぁい様から強奪してきた、111111hitフリー小説です。
管理人、蓮キョを盛り上げてくれる尚ちゃんは好きですよー(笑)