ペットショップへ行こう!





日曜の昼下がり、普段は仕事の入っている芸能人カップル 蓮とキョーコは近所のショッピングモールを訪れていた。
日曜という事で客は多い。主に親子連れだ。
仲睦まじい親子たちを見て、蓮の口元も緩む。

(・・・いいなぁ、あーゆーの。キョーコに頼んでみようかな?)

蓮は「俺の子供を産んでくれ!」なんて言ったら、自分の恋人がどんな反応をするかを想像して、思わずふき出した。

(・・・今度、試そうかな。面白そうだ・・・。)

さて、現在お買い物デートをしている二人であったが、この人ごみの中で見事にはぐれてしまっている。
とりあえずその妄想(←キョーコから伝染)を打ち切って、蓮はキョーコの捜索を再開した。
何度も携帯に電話を入れるが反応はない。
鞄には入っているはずなので、おそらく何かに集中して気づかないのだろう。
蓮はキョーコの好きそうな店を中心に探しているが、その姿はどこにも見当たらない。

(どこに行ったんだ、本当に。・・・ハッ、まさか誘拐!?)

蓮がそんな可能性も考え焦り始めた頃、背後の方の母子の会話が耳に入ってきた。

「こら、まーくん!いつまでもガラスに張り付いてないで行くわよ?うちではワンちゃんは飼えないの。」
「もうちょっと見たいー!」
「ダァーメ!いつまでも見ていたら、お店の人が困っちゃうでしょう?」
「じゃー、あのお姉ちゃんは??ずーっといるよ?」
「あ・・・あのお姉ちゃんはきっと飼うのよ。んもぅ、ほら行くわよ。おもちゃ買うんでしょう?」

そんな会話をした母子は、そのままおもちゃ屋へと向かっていった。
しっかり聞いていた蓮はピーンときて、人ごみをかきわけてペットショップにたどり着いた。

そこにいたのはキョーコだった。
この人ごみの中、しゃがまれていては見つからないはずである。

「キョーコ、探した。」

蓮は背後からそっと近寄り、包み込むように抱きしめて、耳元で囁いた。
驚いたキョーコはビックリして立ち上がろうとしたが、蓮の腕で阻止され、勢い余ってショーウィンドに頭を打ち付けた。

「つぁああぁ・・・・」
「大丈夫?・・・よかった、ガラスも割れてない。」

ホッと一安心した蓮であったが、キョーコの頭突きの所為で、中の動物はビックリして一斉に吠えだしている。
しまいには、店員が店先に出てきてしまった。
人の良さそうな男性店員を見て、キョーコは慌てて立ち上がった。

「す、すみません!驚かしちゃって・・・、あの、すぐどこかに行きますから!」

顔を真っ赤にしながら、キョーコは謝った。
上目遣いのオプション付きで・・・。
男性店員の頬が赤くなったのを蓮は見逃してはいない。

「あ、いいんです!それより、あの、おでこ大丈夫ですか?」
「へ?」
「すごい音がしたんで・・・。」
「あ、やだ////見られてたんですか?」

照れたキョーコは更に可愛いからたちが悪い。
蓮は頃合いを見計らって、二人の間に割って入った。
というか、これ見よがしにキョーコを引き寄せた。

「大丈夫ですよ。石頭ですから。それより、お店に戻らなくていいんですか?」
「あ・・・はい。そうですね。」

明らかに落胆した店員を見て、蓮は心の中でガッツポーズをした。
一般的にココまですれば、大抵の男は勘付いて引き下がるものである。
しかしこの店員は違っていた。
すごすごと店内に入るかと思ったら、彼は思いだしたかのように蓮達の方を振り返った。

「あ、あの!さっき、ずっと中を覗いてましたよね?その、中に入って見て行かれませんか?」
「あ、でも・・・購入するわけでもありませんし・・・」
「構いません!是非、見ていってください!」

そう強く進められ、キョーコはおずおずと蓮を見上げた。
その目ははっきり「見たいv」と告げている。

「入ろうか。」
「うんv」

店内に入ると、まだ犬たちが興奮冷めやらぬ様で、けたたましく吠えていた。
店員はキョーコが先程まで見ていたらしい子犬を連れてきた。
短い足と長い胴が愛らしいミニチュア・ダックスフントである。

「ふああああ/////可愛いぃ〜〜〜〜!!!」
「はい、どうぞ。」
「え!?抱っこしてもいいんですか!?」
「えぇ、もちろんです!」
「わ〜〜いvvv・・・・ふわふわぁvv」

犬を抱き上げたキョーコはご機嫌で、犬を抱っこする仕草はそれだけで大変微笑ましい絵になっていた。
その光景には店員たちも思わず口を緩ませている。
そんな中で蓮だけは何とも言えない笑顔を作っていた。
そして別の女性店員が連れてきてくれた子猫を蓮も抱き上げた。
まだ小さくて、愛らしいアメリカンショートヘアの子猫は、一声鳴いて蓮の手に擦り寄った。
こちらも大変絵になっている。
店内の視線はすっかりこの二人へと向けられていた。

すっかり子犬にメロメロなキョーコに蓮は声をかけた。

「・・・その犬を飼いたいなら、飼ってもいいんだよ?」
「ダメよ。お互い忙しくって、ろくに遊んでもあげられないし、可哀想でしょう?」
「じゃあ、猫は?」
「猫ねー・・・」

キョーコは蓮の腕の中でくつろいでいる猫を見た。
猫は顎をくすぐる蓮の長い指を軽く噛んだりして、じゃれて遊んでいる。
可愛らしいのに、可愛らしすぎて・・・・

「・・・ダメ。」

キョーコは蓮と猫から目線を逸らした。
蓮は特に気にした様子もなく、猫と遊んでいる。

「わがままだね。」
「どうしても飼うなら、絶対犬よー。ねーv」

そう言ってキョーコは抱いていた犬に頬ずりをした。
蓮は先程感じた気持ちが、その時確信に変わった。
犬と戯れるキョーコは可愛い。すごく可愛い。
しかし、ふつふつと嫉妬心が湧いてくるのも事実であった。

「・・・やっぱり却下。」
「そうね、まだペットはいいかも・・・(猫にヤキモチって・・・)」

お互い小動物に対してまで嫉妬してしまった事が情けなくて、目を逸らしあっていた。
二人は子犬と子猫に別れを告げて、更に店内を見る事にした。

「あ、見て!ハムスター!」
「へぇ、小さいね。実物は初めて見たかも。じゃあ、これ飼う?」
「だからー、飼わないってば!見てるだけ!」

しかし、そんな事を言っても顔はそう言っているようには見えない。

「・・・じゃあ、ペットじゃなくて赤ちゃんでも作ろうか?」
「・・・・・は?」
「キョーコがペットを飼いたそうだったから・・・」
「子供はペットじゃないでしょう!?もっとダメよ!」
「どうして?俺としては犬とか猫よりも欲しいけどな。本気で。」
「え・・・/////」
「プッ・・・」

想像していた通りの反応に、蓮は思わず笑いを堪える事ができなかった。

「か、からかったのね!?」

顔を真っ赤にしたキョーコだったが、笑われた事でからかわれたと想い、今度は顔を赤くして怒り始めた。
手を振り回して、蓮に対して怒りをぶつけた。
しかし蓮はそんなキョーコの攻撃をさらりとかわして、そっとキョーコの耳に囁いた。

「・・・産んでほしいのは本当だよ。」

耳元から口を離して、蓮はキョーコの顔を覗き込んだ。
キョーコの顔はやはり顔は赤い。
微笑みかける蓮の顔は、猫に対するそれよりも優しい笑みだった。











こちらはスキビサイト『Organism Dream』様のナオ様から頂いた、相互記念リクの作品ですvv

リクは「『彼氏or彼女と〜へ行こう!』でペットショップへ!」というものをお願いしましたところ、こんな素敵な作品となって帰ってきましたよ……っ(感涙) ←違うだろ
お互い愛玩動物に嫉妬する二人に乾杯♪そして、キョーコちゃんの妄想癖が伝染した蓮様。最高です!

ナオ様、素晴らしき作品をありがとうございました!