甘い香りに誘われて





この部屋の住人、最上キョーコは鼻唄なんか歌っちゃう位とてもウキウキしていた。

今日は彼女の付き合って一ヶ月になる彼氏が長期ロケから帰ってくる日なのだ。

ピンポーン


「ただいま、キョーコ」
微笑む笑顔は誰に向けるものより優しい
「おかえりなさい」
ギュッと抱き締められてキョーコは2週間ぶりに落ち着く。
それは、蓮も一緒で―
懐かしい感じに帰ってきた歓びを噛み締める。


―が、


「「ん?」」
二人同時に何かを感じて離れる。
前とは違う。
そう…
 カオリガチガウ

「キョーコ…シャンプー変えた?」
「ううん、蓮は?」
「変えてない」
しばらくの間黙り込んだ二人は、共通の“変えたもの”を思い出した。
「「あ…香水!!」」

おもむろにキョーコは再び蓮にくっついた。
彼が喜ぶのは言うまでもない。
「キョーコ!!ついにその気に…」
「なんの香り?」
「へ?」
「蓮…どの香水に変えたの?」
「あぁ…」
瓶を出そうとする蓮の手を押しとどめて、
「当てっこしない?」
(自分で当てたがるなんて…キョーコらしいな)
蓮は微笑んで彼女の申し出に頷く。
「そのかわり、先に当てた方が負けた方に一個だけなんでも言うこと聞いてもらう…いいね?」
「望む所よっ」
さすがはキョーコ、香水には相当詳しいらしく…いつもなら絶対断るのに、自信満々で引き受けた。

「蓮の香水…どっかでかいだ気がするのよね…」
呟きながら擦り寄るキョーコを蓮はすかさず抱き締める。
「キョーコの香水はなんだか林檎っぽいよね?」
「もう、蓮…くっつきすぎ////」
彼も香水のCMなど多数に出演している為に詳しいようだ。
キョーコの持ってきた雑誌を広げて、二人は互いの香水を当て始めた。



「蓮…これでしょ!!」

「違うなぁ〜」

「じゃあこれ?」
キョーコはさっきから派手めの香水を指差している。
「外れ!!大体ここら辺にのってるヤツはアイツがCMやってるでしょ」
アイツ…そう不破尚の事だ。
「あ…そうよね!!じゃあ…」
いいかけた唇を蓮の指が軽く押さえる。
「キョーコばっかり…たまには俺に当てさせて?」
キョーコは小さく頷く。



「キョーコのはね…これでしょ」
それは紅い林檎の形の香水。

「え!!どうしてわかったの!?」
目を丸くして尋ねるキョーコに蓮はとろけるような笑みを浮かべた。


きっと彼女は“snow white”なんて名前をつけているに違いない…



「白雪姫みたいだもんね」
「!!」
「どうしてそんな事まで…」

「秘密。さぁ、俺が勝ったから…お願い一つきいてくれるね?」
キョーコはビクッとする。過去にあれだけいぢめられた為にこの男の“お願い”が少し怖いのだ。
蓮はしばらく考えて…
それから甘い微笑みをたたえてただ一言







「ねぇ、キョーコ…おかえりのキスまだだったよね?」











こちらは花ゆめ系サイト『桜華欄万』の下條夏梨様から相互記念に頂いた作品でございますv本来は前後編に分けられていたのですが、一つにさせていただきました。

管理人の「蓮様とキョーコちゃんがお互いのつけている香水を当てる」という面倒くさいリクを、甘〜く叶えてくださいましたv 抱き合って気付く、お互いの香りvv
メルヘンチックなキョーコちゃんが可愛いですo(^-^)o さらに蓮様の「お願い」がカワイイ(笑)

夏梨様、本当にありがとうございました!