オレンジ色の独占





屋外撮影の為外に出ていた社は、休憩に入った蓮の元へ飲み物を届に来た

「お疲れ、蓮」

「あっ、有難うございます」

いつも通り見事な演技で撮影は順調に進んでいる
蓮は、今まさに公私共に絶好調と言える状態だった

長かった蓮のアプローチ(社の苦労)も報われ、晴れて恋人になったキョーコとの中も順調
むしろ周りからすれば、順調過ぎて被害を受ける者も居る位

今日も恐らくこの仕事が終われば、可愛い恋人が夕食を作って待っているのだろう

そんな事を考えて居ると、後ろから聞き覚えのある声
振り返って見れば巨大モニターに、噂のキョーコの姿が映し出される

「あっ、キョーコちゃんの新しいCM・・っ!!///」

社は、その映像を見て動きを止めた
隣に座る蓮の反応が恐ろしかったからだ・・・

それは洗剤のCMだろうか、サフラン色のネグリジェを着て
オレンジ色の何とも柔らかそうな毛布に包まり、はにかんだ笑みを浮べている
色んな角度から映されるその映像は、町を歩く人間の目を釘付けにして止まなかった

何故ならそのどれもが、驚くほど愛らしい姿のキョーコばかりだったから

社は冷や汗を流した
隣に座る敦賀蓮と言う男は、恐ろしいほど独占欲が強く
手に余るほどの嫉妬深さを持ち
愛しいキョーコに言い寄る男は、百パーセント威嚇して回るような男なのだ

こんな映像を見れば、怒り狂うに違いない
そう思い恐る恐る振り返って見ると、そこには女性が失心しそうなほどの笑みを浮べた蓮の姿

「蓮?・・・キョーコちゃん・・可愛いな・・・」

様子を見る為恐々声をかけてみる

「そうでしょう、俺のキョーコですから」

当たり前と言ったその様子に、砂を吐きたいのも山々だが
今はそれより気になる事がある

『蓮が怒ってない!いつもなら、どこの誰に撮ってもらうとこんなに可愛く映るんですかね?位言いながら、笑って周囲を凍りつかせるのに!』

その上いつもなら、仕事が終わるなり事務所に向かい、事の次第によっては攫って帰るのに
何故蓮は怒っていないのか、いつもと何が違うのか

「・・でも、この後の方が可愛かったんですよ」

頭を抱えていた社は、蓮のその一言に動きを止めた

「この後?」

目が点になっている社に、蓮はクスクス笑いながら頷く

「これ撮ったの、俺ですから」

「俺そんな話聞いてないぞ!!」

マネージャーを務める事早数年、自分の知らない所で蓮が仕事をしているとは露ほどにも思わなかった
それも話を聞いて見れば、偶然予定していた人物が体調不良で来れなくなり
予定も詰まっていた為、居合わせた蓮が自分で良ければと立候補したらしい

勿論こんな話題性のあるCMが出来るならと、向こうもすぐにOKを出し
この映像が作られたそうだ・・・

「それならそうと教えてくれれば良いのに・・・」

安心した社が呟くと、蓮は幸せそうな笑みを浮かべ

「もっと可愛いのもあったんですけどね、勿体無いから使わせなかったんです」

笑いが苦笑いに変化していく
この辺りが独占欲の強さを物語っているようだ
むしろ、はじめに用意されていた撮影者は本当に体調不良なのかと、そんな疑いまでかけたくなるよう・・

「ロングバージョンの方には、俺の名前が出ますから解り易いですよ」

『ロングバージョン・・あるんだ・・・』

今度は威嚇の予備軍
社は笑いながらも溜息を吐いた
少しは寛大になったのかと思えば、やはり敦賀連は敦賀蓮

キョーコを一途に想う彼の行動を止める事は、もはや誰にも出来ないのだろう











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キョーコちゃんにゾッコンらぶな蓮様で。