……えー、「明日香さんブチ切れ」の章でした(汗)
かなり原作と離れてます。無理やり元筋へ戻しましたが、ちゃんと戻せているのか微妙。
ただの対決 日当たりも良く、快適な気候の中。 お茶の点て方を享受する瑠璃子の上達が意外にも早いことに、スタッフの間から感嘆の溜息が漏れる。 「瑠璃子ちゃん、様になってんじゃ〜〜んっ。初めてにしてはのみこみ早いんじゃね〜?」 「ホントホント。これは、監督気に入るな」 口々に向けられる賛辞に、瑠璃子は気づかれないようほくそ笑む。 (…実は、子供の頃ムリヤリ親に習わされた事があるのよね……すぐやめちゃったけど。まさか、こんなところで役に立つ日が来るとは思わなかったわ……ふふ…) 「じゃ、キョーコちゃんもレクチャーしてもらっとくかい?」 「――――……いえ……私は…できればあまり正座したくないので」 「あ……そうか……」 申し訳なさそうに断るキョーコの様子から彼女のケガの程度が相当酷いことを知り、笑みを深くする。 先程の登場シーンでは大きな差をつけられたのだ。このシーンで挽回しなくてはならない。そして、今ある全ての状況が瑠璃子の優位を決定的なものとしている。 そのことに満足している瑠璃子とは対照的に、 「…それより、さっきからどうしても腑に落ちない事が一つ…」 キョーコは引き攣りそうになる顔を必死に抑えながら、できるだけ冷静な声で切り出した。 「ん?なんだい?」 「瑠璃子ちゃん。貴女、紫外線アレルギーじゃなかったの?」 一瞬の静寂がその場を支配する。直後、 「「「「「ウソォ〜〜〜!!ただの日焼け嫌いじゃなくて〜〜〜!?」」」」」 「!!?」 答えは、本人ではなく聞いていたスタッフ達からもたらされた…… ――ところ変わり、新開と明日香、そして蓮の三人は、芝生の上を歩きながら次の現場へと向かっていた。 だが、三人の表情は文字通り三者三様。新開は上機嫌、蓮は疑心顔、明日香は……言うまでもない。 「次のシーンは屋外だが、意外と素直に瑠璃が外へ出たな。宝田さんの話ではもっと難航すると思ったのに、よほどあの子に負けたくないんだな〜〜〜〜♪」 「(それが狙いのクセによく言うわねこの腹黒)……ええ、そうですね。おかげで私も助かりました。毒吐く手間が省けて。」 「ま、碧ちゃんの毒舌が聞けないのはちょっと物足りない気もするけどな」 「お望みでしたら、今すぐにでもお聞かせしましょうか?」(にっこり) 「遠慮する」(即答) 明日香の申し出をものの見事にバッサリと切り捨て、「そういうのは第三者の立場だからこそ楽しめるんだし?」と続けた。 その対応は予測済みだったのか、明日香は特に気にした様子もなく脚本の変更場所の確認を再度行い始める。 そんな二人を黙って見ていた蓮が何かを訊こうとした瞬間、三人の目と鼻の先で繰り広げられている騒動が彼らの注意を引いた。 「…なんだ!?なんの騒ぎだっ」 「……さあ?」 「ああーーっ!おちついてっ」 「おちついて2人共っ」 「とりおさえろ!」 「う゛おっ!?」 「あっ」 スタッフ達の賢明かつ必死の説得――というか制止を物ともせず、その中心にいる二人は艶やかな着物姿とはかけ離れた体勢で突っ張り合っていた。 「紫外線アレルギーなんて大ウソだったのね!!かわいい顔してどこまで根性がまがってるの!!このウソつきアイドル!!」 「あんたが勝手にそう思い込んだだけでしょう!!私は一言だって紫外線アレルギーなんて言ってないわ!!自分の早とちりを私のせいにしないでよ!!このっLMEのハイエナ部員!!」 「………」 「……おお……こりゃ…」 「……俗に言う『女の闘い』ってやつかしら…?」 「…それは違うと思いますが……」 「違うなら違うってその場で言えばいいじゃない!!それをわざと身体の弱いふりまでしてあんなでっかい傘持たせるわ、おぶらせるわ!!(怒) 日焼けが嫌だったからですって!?そんなふざけた理由で足にケガまでして真剣に貴女を守ろうとしてた私が本当にバカみたいじゃない!!(怒)」 「………………ふぅん?あのケガはそこの愚者のせいなワケ……しかも…何?傘持たせておぶらせた? いい根性してんなオイ」 「み、碧ちゃん…?」 「あ゛あ゛?」 「……イヤ、何デモナイ」 「足のケガは、あんたが勝手に転んだんでしょーーーーーー!!それだって私は『おぶって』なんて一言も言ってないわ!!責めるなら私じゃなくてマヌケで愚かな自分を責めなさいよ!!」 「なんですってーーーー!?」(むっかーー!!) 「……殺ス。」 「(ヤバイ!!碧ちゃんの怒りが臨界点を突破したか!?) こっ、こらこら2人共っ!やめなさい!!(ていうか本気でやめてくれっ!クランクアップ前にターゲット限定で死人が出るっ)」 「「!!」」 明日香から湧き出る致死量の殺気を間近で浴びた新開の必死な制止に、いがみ合っていた二人の視線がそちらに向く。 刹那、動きがピタリと止まった。気が立っていた二人でも十分に感じ取れるくらい凄まじい怒りを発する人物に目がいく。 (マジ怒り一歩前ーーーっ!こ、怖い…っ) (何でそんな荒んだ眼で私を見るのよーーーっ!何かそのままこの世とお別れできそうなんだけどっ) 「……瑠璃子ちゃん?」 「な、なによっ!?」(涙目) 「どれがいい?」(にっこり) 「な、何がっ!?」 「窒息死と全身打撲による死と溺」 「ストーーーーップ!碧ちゃん、ストップ!!抑えてくれ頼むから!!」 「大丈夫ですよ、監督。殺(ヤ)るのは撮影が済んでからですからv」 「あ、ほんと?それならいいか♪」 「よくなーーーーいっ!!監督!!止めてよっ!!」 「そう言われてもなぁ……」 必死に懇願されるが、新開とて明日香の怒りを抑える術はない。そもそも撮影を除けば瑠璃子を庇い立てする理由はないし、明日香にケンカを売る無謀さも持ち合わせていない。 しかし、助けは意外なところから出た。 「あ、明日香ちゃん?る、瑠璃子ちゃんとの勝負は、私自らつけたいんだけど…」 なんと、キョーコから救いの手が。これには、新開も瑠璃子も目を点にする。 実際のところ、キョーコとしては瑠璃子を庇ったつもりはない。ただ、瑠璃子との事は自分の力で決着をつけたかった。 明日香はしばらく無言だったが、キョーコの気持ちが伝わったのか、青筋は残したまま徐に表情を和らげた。 「貴女がそう言うなら、今回は譲るわ。本当はまだ腸煮えくり返ってるんだけどね?」(ギロリ) 「っ!!」(ビクッ) 「彼女の足のケガについては、貴女のマネージャー交えて後でしっかり話させてもらうから。覚悟しやがれ」 「……わ、わかったわよ!!」 暗に慰謝料のことを仄めかし、明日香はスタッフ達の下へと向かった。変更した部分などを伝えるためである。 彼女に視線を向けたまま、 「……本当にキョーコちゃんには甘いな…」 「…ええ、そうですね」 互いに率直な意見を交わす新開と蓮。彼女が何故そこまでキョーコにこだわるのかわからないが、とにかく最悪の状況は回避できたようだ。 一先ずキョーコに明日香を止めてもらった礼をしようと、視線を戻す。すると、未だ組み合ったままの二人が目に入った。 「おいおい、まだそんな事してたのか。勝負と言っても、こんな所で力技で勝負しても意味がないぞ。勝敗は演技で演技でっ」 「「!!」」 ツッこまれて、初めて自分達の状態に気づく。 瑠璃子は明日香がいなくなったことで勝気さを取り戻し、「そんな事わかってます!!」と、思いっきり手を振りほどいた。その拍子にキョーコの体勢は崩れ、そのまま地面に倒れこむ。 「監督!!さっさと始めて下さい!!」 「いや……その前に身なりを整えなさい。スゴい事になってるぞ」 瑠璃子は撮影の開始を求めたが、乱れた衣装で撮影するわけにはいかない。 着崩れを直すよう注意した後、 「俺は先に行ってるから、ちゃんとして来なさい。いいね?」 と言い残し、新開も明日香の下へと向かった。
……えー、「明日香さんブチ切れ」の章でした(汗)
かなり原作と離れてます。無理やり元筋へ戻しましたが、ちゃんと戻せているのか微妙。 |